体で覚える英語の発音:第9回 体操で覚えるア系母音1
日本人にとって「ア」に聞こえてしまう母音(「ア系母音」)、hotの[ɑ]、hatの[æ]、hutの[ʌ]の、手を使った出し方「フィン
ガーアクション(FA)」)を、前回までは紹介しました。
FAを付ければ、区別は、まさに手に取るようにわかります!
でも、今回は、FAのさらに上を行く、究極の区別法を紹介します。それは、体全体を動かして覚える方法。題して「ア系母音体操」
これは、親交のある東京家政大学の乾隆(いぬいたかし)教授が作った「母音体操」に、私がさらに微妙に味付けをした体操です。
■ア系母音体操
では、ア系母音体操のやり方です。図を見てください。
①[ɑ]
[ɑ]は口を最大限に開いた、長めの「ォアー」。口の開きは特に縦方向を意識します。
縦方向の開きを表すため、腕をピンと伸ばし、指先も伸ばして、その腕を下から真上に上げていきます。バンザイの動きです。
このとき、目は上を見て、背筋も反らします。
[ɑ]は長い母音です。長さを表すため、両腕はゆっくり上げるようにします。
②[æ]
[æ]は口を横に引っ張って出す長めの「ェアー」。口の開きは横方向を意識します。
まず腕を、胸の高さで折り曲げ、肘を張ります。胸を張っていきながら、両肘を左右に開きます。左右に肘打ちを行う感じです。
[æ]は長い母音なので、両肘はゆっくり広げていきます。
③[ʌ]
[ʌ]は顔から力を抜き、口を半開きの状態にして出す、暗い感じの、短い「アッ」(ないしは「ウッ」)。
腕と手を幽霊のように構えます。これで脱力できます。背中も丸めます。これで暗い感じが出ます。短い音なので、腕は瞬間的に、軽く前に出すようにします。
これらの動きは、実際に口で発音しながら行ってください。立って行うとより効果的です。
■母音体操はなぜ効果的?
皆さんは、ばかばかしいと思いますか。でも、だまされたと思って、やってみてください。本当に3つのア系母音が体感できますから。
私は今まで、多くの英語の先生方、特に児童英語の先生方に、この母音体操を伝授してきました。これは大絶賛の指導法なんです。
子供たちは、面白がってこの動きを試します。そして、実際、彼らの発音は、これを機に急に変わるんです!
でも、なんで効果があるんでしょうか。それは、口の正確な動きを、まず体で、拡大して再現しているからです。
人間の体はつながっています。だから、口がうまく動かせなくても、まずは体で同じ動きを大げさに表現してみる。すると、口もつられて、同じ動きをしてしまう、というわけです。
この原理はFAとまったく同じです。
ところで、このブログに載せている絵は、誰が描いてるんだ、とよく聞かれます。もちろん、私が描いてます~!